●大腸の役割
大腸の主な役割は、便をたくわえることと、水分と電解質の吸収といわれていますが、実はもう一つあります。大腸の中には腸内細菌が多く生息していて、これらが未消化物を発酵によって分解しているのです。中でも食物繊維を酢酸、プロピオン酸のような短鎖脂肪酸に分解します。
短鎖脂肪酸は、腸管細胞の重要なエネルギー源として、腸管の絨毛上皮の成長維持に役立てられます。プロピオン酸の多くは、門脈を通って肝臓へ送られ、糖に作り換えられます(糖新生)。とくに牛などの反芻(はんすう)動物では、このプロピオン酸からの糖新生によって、糖の必要量の多くがまかなわれています。
さらに短鎖脂肪酸は、腸管の機能に対しても重要な役割を演じています。短鎖脂肪酸は低い濃度で血管を拡張する作用があります。血管が拡張して血流が増えると、栄養素の吸収が良くなります。
食物繊維は昔、ヒトの消化酵素では消化されない物質であり、有用性があるとは考えられていませんでした。しかし現在では、このように腸の機能にとって重要であると認識されています。
(「よくわかる栄養学の基本としくみ」)
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