●肩こりは筋肉の疲れから
肩甲骨をぶら下げる筋肉は、上肢(じょうし)の重さを支えるために、いつでもある程度の力で収縮していなければなりません。実は、これが肩こりの大きな原因になるのです。
筋肉は、収縮するためにエネルギーを使います。肩甲骨をぶら下げる筋肉は、伸びたり縮んだりの動きをしていませんが、肩甲骨をぶら下げる力を出すだけでも、エネルギーを消費します。エネルギーを生み出すには、血液から送られる酸素が必要です。ところが、肩甲骨をぶら下げる筋肉は動きが少ないので、血液の循環が悪くなってしまうのです。
動脈を通して全身に向かう血液は、心臓の拍動(はくどう)の力によって押し出されます。しかし、静脈を通して心臓に戻る血液は、筋肉などの運動の力によって運ばれるのです。手足を走る静脈には、あちらこちらに弁(べん)があって、逆流を防いでいます。私たちが筋肉を使って身体を動かすと、静脈があちらこちらで圧迫されて、弁と弁にはさまれた区間の血流を、心臓に向かって押し出しています。これを筋ポンプといいます。
激しいスポーツで筋肉が疲労したときには、手足の先から心臓のほうに向かって、筋肉をしごいていくようにマッサージをします。静脈の血液や組織液が、身体の中心に向かって帰るのを助けてやるのです。ところが肩甲骨を動かす筋肉は、エネルギーは消費するのに、あまり動きがありません。ですから、筋ポンプの働きが弱くて、血液の循環が悪くなりやすいのです。血液や組織液を心臓に向かって戻して、血液の循環をよくしてやるのが、疲労を回復させるよい方法です。
肩がこったときには、他人の手を借りて筋肉を動かすもよし、また肩甲骨をぶら下げる筋肉を自分で積極的に動かしてもよいのです。ようするに、肩をもんでもらったり、自分で肩を動かしたりすると、肩のこりが楽になります。
(よくわかる解剖学の基本としくみ)
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