太っていても痩せていても栄養不足の現代人。
「薬がいらない体になる食べ方」から抜粋。
●「栄養過多」ではなく「栄養不足」で病気になる
栄養はもちろん、病気とのかかわりも深い。「病気になるのは栄養のとりすぎ」と考えている人が多いかもしれないが、多くの患者さんを診察していると、意外にも栄養は過剰摂取よりも、むしろ不足に問題があるのだ。栄養学をやっている医師のあいだでは、「栄養の過剰摂取で死ぬ人は世界中に一人もいない」という言葉が語られているくらいなのだ。
よくいわれるのが、塩分のとりすぎで高血圧になるという”定説”。しかし、私たちの体では排出機構が働いている。実際、塩分のとりすぎで高血圧になっている人の比率は少ないのである。にもかかわらず、塩分制限をしすぎている。日本人の食生活にはそんな傾向があるような気がする。
一方、明らかに栄養不足が引き起こしている病気がある。代表的なのがビタミンCの不足で起こる壊血(かいけつ)病、ビタミンB1の不足が原因になっている脚気(かっけ)だ。
これらの病気は、いずれもビタミンの発見につながった欠乏症である。そして栄養が豊富な現代においては、すでに見られない過去の病気であると医師のあいだでも信じられている。しかし現代の栄養事情の変化によって、実は”隠れ壊血病”や、”隠れ脚気”などが増えてきているのである。
たとえば乳幼児からはじまるイオン飲料の摂取やスポーツ飲料の過剰摂取の問題である。乳幼児が飲むイオン飲料もスポーツ飲料も、体から失われやすいミネラルが豊富に含まれ、吸収がいいという宣伝文句から、体にいい飲み物のように思われている。小さいお子さんにとっても水を飲ませるよりも体にいいだろうと思い、水代わりにイオン飲料を飲ませていたことによって、脚気を生じた子どもの患者さんが増えていることが報告されているのだ。
イオン飲料やスポーツ飲料には、大量のブドウ糖が含まれる。しかも冷たく冷えた飲み物は甘みを感じにくく、のど越しもいいため、ごくごくと一気に飲んでしまう。つまり甘い食べ物を食べるよりも、大量のブドウ糖が急激に体に吸収されてしまうわけだ。
体は短時間に大量に吸収されたブドウ糖を代謝するために、ビタミンB1を消費する。このことが日常に繰り返されることによってビタミンB1が枯渇し、脚気が生じているのだ。
食料事情が貧弱であった栄養失調の時代の脚気とは違い、まさに現代の食事情がつくった栄養失調ということができる。
このように現代の食事では、カロリーは十分でも、重要なビタミンやミネラルが不足してしまい、それが多くの症状や病気と関係しているのだ。
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