●低コレステロールとうつの関係
脳の複雑な神経細胞のかたちを保つために重要なのが、コレステロールだ。コレステロールは神経伝達をすばやくおこなうのにも使われている。
それほど重要な動きをしているコレステロールが脳に少ないとしたら、いったいどんなことが起こってくるかは、容易に想像がつくのではないだろうか。
コレステロールの値が低い人は、うつの症状を発現するケースが、じつに多いのだ。コレステロールが脳内に少なくなると、セロトニンの機能が異常になる。セロトニンは心のバランスを保つために重要な脳内神経伝達物質であることはお話ししたが、バランスが崩れると、心はうつの症状を訴え、問題行動へとつながっていくのだ。
低コレステロールとうつの関係を示したデータは、数多い。アメリカで、就学児童や青年を中心に調査した結果では、コレステロール値が正常な群に対して、低コレステロールを示した群では、乱暴な行動が理由で停学や退学の処分を受けていた若者が3倍もあったというのだ。その報告はこう締めくくっている。
「コレステロールの低下は、攻撃性亢進のリスクファクターである」
人間ドックを受けて低コレステロールだった人は、うつの割合が高いという報告もある。出産後にうつ症状を訴えることを「産後うつ」というが、出産後コレステロール値が急激に下がることがうつを引き起こしているのではないかと考えられ、ここでも低コレステロールが関連していることがわかってきている。
さらには、高コレステロール血症と診断された人のなかで、投薬によるコレステロールの低下治療を受けた人と受けなかった人を比較したデータでは、投薬治療を受けていた人において自殺や事故死が多いという報告も少なくないのである。
うつの症状を訴えてわたしのところにやってくる人の検査データにも、それははっきりとあらわれている。あきらかに低血糖症と診断する人のなかには、コレステロールの値が低い人が、少なくないのである。
さきほど、糖尿病と低血糖症は”表裏一体”の関係にあるとお話ししたが、同じことがコレステロールの値の判断にもいえるのではないか。とくに、若い世代に起こる問題行動や、中高年以上の人のうつも含めて、低血糖症とあわせて考えていかなければならない問題だと思うのだが……。
(「うつ」は食べ物が原因だった!)
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