雨が降る前はなぜ痛むのか?
●痛みで天気予報!?
「天候が悪くなると、何となく調子も悪い」という話はどこかで聞いたことがあるでしょう。特に、長い間痛みにさらされた古傷があると、その傾向は強く現れます。実際に患者さんのお話を聞いていると、雨が降っているときより、降る前の方が痛い人が多いようです。これはなぜなのでしょうか?
低気圧が近づくと、気圧は徐々に下がり雨が降ります。気圧が上がると、耳の中にあるセンサー(内耳)がそれを感知し、視床下部を通じて交感神経活動が亢進します。交感神経活動が亢進すると神経末端からノルアドレナリン(NA)と呼ばれる物質が血中に放出され、痛みを感じる神経や一部の侵害受容器を刺激します。
また、NAは血管を収縮させたり、血液中のマクロファージや肥満細胞を活性化させてヒスタミンやTNFαと呼ばれる物質を放出し、痛みを感じる神経を刺激します。さらに、副腎髄質にもはたらきかけてアドレナリンを分泌し、同様に痛みを感じる神経を刺激します。
普通の状態では、気圧が下がって痛みを伝える神経や受容器が刺激されたとしても、痛みを感じることはほとんどありません。しかし、あらかじめ神経損傷や炎症などが存在すると、侵害受容器やDRGなどに正常時では認められなかった交感神経に反応する受容体が新たに出現するため、気圧の変化でも痛みを感じるようになります。そのため、古傷を抱えた人は、気圧の変化に敏感になり、天気予報ができるのです。
(「よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ」)
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