糖質制限では、糖新生に頼らずケトン体を使えるようになれば筋肉量は保たれる。
●断食が脳をより明晰にする
通常は毎日の食事によって、脳にブドウ糖が燃料として供給される。食間にも脳には引き続きブドウ糖が安定して供給されるが、このブドウ糖はおもに肝臓と筋肉のグリコーゲンを分解してつくられる。
だが、グリコーゲンの蓄えは、同量のブドウ糖しか供給できない。蓄えがなくなると、代謝が変わり、新たにブドウ糖の分子を、おもに筋肉にあるタンパク質のアミノ酸からつくるようになる。この過程はその名も「糖新生」という。プラス面では、これによって必要なブドウ糖が器官に与えられるが、マイナス面では、筋肉が犠牲になる。筋肉を消耗してしまうことは、当然、好ましいことではない。
ところが、人間には脳を働かせる生理学的しくみがもう一つある。
食料がもはや手に入らなくなって三日ほどたつと、肝臓が体内の脂肪を使って、特別な脂肪「ケトン」をつくり始めるのだ。このとき、βヒドロキシ酪酸が脳のための非常に効率のよい燃料源となって、食糧難の間も長期間、認知機能を保つのである。こうした代わりの燃料源のおかげで、「糖新生」に頼ることが減り、その結果、筋肉量が保たれるのだ。
しかしそれ以上に、ハーバード・メディカル・スクールのジョージ・F・ケーヒル教授の言うように、「最近の研究では、βヒドロキシ酪酸が「ただの燃料」ではなく「スーパー燃料」であることを示している。ブドウ糖より効率よくATPエネルギーを生産するのだ」
実際、ケーヒル博士たちの研究者は、βヒドロキシ酪酸はココナッツオイルを食事に加えるだけで簡単に得られ、抗酸化機能を高め、ミトコンドリアの数を増やし、新しい脳細胞の成長をうながすとしている。
研究ではカロリー制限によって活性化される、脳にも体にもよい効果をもたらす遺伝経路の多くが、たとえ短期間の断食でも同じように機能することが証明されている。
これは従来の「断食をすると代謝が低下し、身体が飢餓モードに入るため、脂肪を保ち続ける」という考え方とはまったく逆だ。断食は実際には減量をうながし、脳の健康も高めるという全身への効果がある。
(「いつものパン」があなたを殺す)
5時間前後糖質を我慢できれば、ケトン回路に切り替わる話もある。
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