●住居の安全と健康
健康な住居環境のためには、住居内の有害物質の除去や事故の防止に向けた設計段階からの安全管理対策が必要である。近年、注目されている安全管理対策には、シックハウス症候群に対する予防対策や室内での転倒事故防止に対するバリアフリー対策などがある。
1)シックハウス症候群対策
シックハウス症候群は、住宅建材から発生する化学物質による健康被害の総称である。空気中に揮発し空気汚染のもとになる化学物質を揮発性有機化合物volatile organic compoundsという。発生頻度が高く住宅性能表示制度で測定対象とされるVOCは、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、アセトアルデヒドの6物質である。ホルムアルデヒドは接着剤に含まれ、目・喉への刺激痛、頭痛、聴覚鈍化を引き起こす。トルエン、キシレンは塗料に含まれ、喘息やめまいなどの原因となることがある。
2006(平成18)年には「改正労働安全衛生法」が施行され、VOCを含めた特定の化学物質についてその有害性・危険性を低減するための自主的な取り組みの促進が提起された。また、2009(平成21)年には学校保健法が「学校保健安全法」に改正され、全国的な学校の環境衛生水準を確保するため学校環境衛生基準が告示された。この中で教室などにおけるVOCの換気基準が示された。
シックハウス症候群の予防対策は、室内のVOCを低減させることにつきる。建築時の対策としては、住宅資材にはVOCの発生量が少ない製品を選択し、建材や内装材の塗装は屋外で行い、屋内の塗装には水性塗料を使用する。入居時の対策としては、室内温度を35℃くらいに上げて、その後に換気するという作業(ベイクアウト)を繰り返すことによって建材に含まれるVOCを出しつくす。入居後は、化学処理された家具や家庭用品の使用を控えてVOCの発生を減らすとともに、空気清浄機や吸着板などを活用してVOCを除去し、換気を頻繁にすることによってVOCを排出することが肝要である。
(「シンプル衛生公衆衛生学」)
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