●野球の障害
野球での動作は、ボールを「投げる」「捕る」「打つ」、そして「走る」に分けることができます。
「投げる」動作での外傷としては、肩周囲の筋肉の挫傷(ざしょう)、上腕骨骨折(じょうわんこつこっせつ)などがありますが、それほど頻度の高いものではありません。
ウォーミングアップせずに、いきなり力を入れて投げようとすると、反対方向の動きをする筋肉(拮抗筋(きっこうきん))が同時に収縮して、上腕骨をらせん状にひねるような力が働き、骨折を起こすことがあります。これを投球骨折と呼びます。
「投げる」動作での障害としては、野球肘、肩の腱板損傷(けんばんそんしょう)、肩のインピンジメント症候群などがあります。
また、軟骨が厚くて骨との結合が弱い小児期から肘に過剰なストレスが加わると、軟骨が崩れて、そのかけらが関節内に遊離する離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)が起こります。
小児期の投球障害には、上腕骨の肩関節側の成長軟骨に離開(りかい)が起こるリトルリーグショルダーもあります。
肩や肘に起こる投球障害の多くが、股間節や膝、脊椎の障害を引き金として発生していることが報告されています。投球フォームを見直し、身体の他の部位に支障がないかどうかを確認することをおすすめします。
「捕る」動作での外傷としては、手指(しゅし)の靭帯損傷・骨折があります。
指先にボールがあたったとき、手指の伸筋腱(しんきんけん)が末節骨(まっせつこつ)に付着している部分での骨折や腱損傷が起こり、槌指(マレットフィンガー)状の変形をきたすこともあります。
「打つ」動作での外傷としては、デッドボールによるものが多く、とくに頭部外傷には注意が必要です。
また、バットを握っている手にグリップエンドからの強い衝撃が伝わり、手根骨(しゅこんこつ)の一つである有鈎骨(ゆうこうこつ)の突起の部分に骨折を起こすことがあります。
これは見逃しやすい骨折なので、いつまでも手首の部分に痛みがある場合には、整形外科のなかでも「手の外科」と呼ばれる専門医を受診してください。
「打つ」動作での障害としては、腰をひねることによる腰痛症があります。
骨がまだ成人ほどの硬さをもっていない成長期に、腰をひねる運動を繰り返していると、腰椎分離症(ようついぶんりしょう)を起こすことがあります。
「走る」動作での外傷としては、大腿二頭筋・下腿三頭筋の筋挫傷(肉離れ)があります。ベースを踏むときに足をひねってしまう足関節捻挫もよく起こります。
「走る」動作での障害としては、小児期の膝に特有のオスグッド病(オスグッド・シュラッター氏病)や膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)がよく見られます。
(「スポーツ傷害とリハビリテーション」)
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