私も過去に競歩という競技をしていましたが、日本人が競歩で世界最高記録を出すとは夢にも思いませんでした。
という流れで(笑)競歩もランニング同様バイオメカニクス的研究は常にされております。マラソンでも生かされる力学的な話がありました。
「正しく”歩いて”東京マラソン完走」より抜粋。
●歩行中の力学的エネルギーの流れを考える
フルマラソンを走るためだけでなく、日常の歩行でも「無駄のない動き」というのはどういう動きなのでしょうか。
ここで少しだけ昔話をさせていただきます。
私が競歩の世界に足を踏み入れて数年ほど経ったある日のことでした。練習がようやく終わり、私は疲れ果てた状態で歩いていました。そのとき、同じく練習が終わって疲れ果てた状態の長距離ランナーの先輩と一緒になって歩いていたのですが、いつの間にか置き去りにしていたらしく、気づいたときには自分だけ先を歩いていた、ということがありました。同じように疲れ果てているにもかかわらず、無意識のうちに先輩を置いていくほど歩きが速かったのです。
当時、私はまだ研究の世界に足を踏み入れておらず、「どうして、このようなことが起こるのか」がよくわかりませんでした。しかし、研究の世界に入って歩行のメカニズムを学術的に分析していくにつれ、この現象に対する答えらしきものにたどり着くことができました。どうやらその答えにあたるものが「筋が発揮した力学的パワー、すなわち、力学的エネルギーが身体内部で有効に使われて歩行スピードに変換されるので、最小のパワーでも、ある程度のスピードで歩くことができる」ということでした。
それでは、そのメカニズムがどういうものなのか、そして、フルマラソン完走にどのように役立つのか述べていくことにしましょう。
普通の歩行時における身体内部の力学的エネルギーの流れは古くから分析されていますが(Winter&Robertson,1978;Robertson & Winter,1980)、日本でも、ランニング(榎本ら、1999)、スプリント走(Aeら、1988)、競歩など多くの研究が行われています(法元ら、2003、2006)。
そして、いずれの研究においても「筋肉による力学的エネルギーの発生・吸収はゼロではないが、そのようにして発生した力学的エネルギーは、部分同士が押し合ったり引っ張り合ったりすることによって部分の間でできるだけ伝達させることで、各部分のエネルギーを増減させている」と報告しています。また、「そのような伝達を多くすることで、できるだけ無駄なくスピードを上げることが重要」ということも報告されています。
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