痛みというのは産生される。
●痛みを起こす物質たち
日常生活の中で、画鋲(がびょう)を踏んだり、ナイフで指を切ったりと、痛みを感じる機会は多いでしょうか。しかし、画鋲やナイフが直接受容体(じゅようたい)や神経を刺激して、痛みを起こしているわけではありません。画鋲やナイフが皮膚などの組織を傷つけると、そこから痛みを起こしたり、痛みを感じやすくさせたりする物質が産生され、受容体※と結合することで痛みを起こします。
実際に組織が損傷するとき、損傷部分の細胞内からは種々の物質、すなわちカリウムイオン・水素イオン・ATPなどが流出し、受容体と結合することで侵害受容器を興奮させ、痛みを起こします。また、組織が損傷したことに伴い、血中のキニノーゲンを元にブラジキニンを作り出したり、血小板や肥満細胞からセロトニンやヒスタミンが放出されることで痛みを起こします。これらはすべて発痛物質と呼ばれ、物質単独で受容体を興奮させ、痛みを起こします。
一方、単独で痛みは起こさなくても、少量の発痛物質のみで痛みを感じるように受容体にはたらきかける物質もあります。プロスタグランジンがその代表で、細胞膜の成分であるリン脂質からアラキドン酸を介して産生されます。これらは発痛増強物質と呼ばれ、他に白血球やマクロファージから放出されるサイトカイン、一次求心性神経から放出されるサブスタンスPやCGRPなど様々なものがあります。
このように、組織が壊れることで様々な物質が産生され、痛みが起こります。
※痛みは受容体と呼ばれるセンサーで、機械刺激(手を切る、画鋲が刺さるなどの刺激)、温度刺激(熱い、冷たいなどの刺激)、化学刺激(炎症が起こるなどの刺激)ばど様々な刺激を感じとる。
(「よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ」)
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