●拮抗筋(きっこうきん)と補助筋
同時に働くと、お互いの動きを打ち消す(拮抗する)ことになる筋肉の関係を拮抗筋と呼んでいます。膝関節を例にとると、膝を伸ばす筋肉が大腿四頭筋、膝を曲げる筋肉が大腿二頭筋などハムストリングと呼ばれる筋ですが、両方同時に働いた場合には膝は動きません。
ランニングなどの動作では、大腿四頭筋とハムストリングがタイミングをずらしながら働いていますが、スクワットなどのウエイトトレーニングで大腿四頭筋のみを重点的に鍛えた場合、大腿二頭筋とのバランスが少しずつ崩れてくるということを考える必要があります。
また、同一方向に働く筋肉を鍛えただけでは、横方向の動きの調整や、横方向に制動する靭帯の強さが追いついていかないことも考えられます。
大腿四頭筋やハムストリングを鍛えることによって、直線方向へのスピードは伸ばすことができるでしょう。しかし、多彩な動きを要求される球技や格闘技では、身体が横に振られた際、それを元に戻すために働くのは、股関節を開く中殿筋や、股関節を閉じる内転筋です。相対的に、それらの筋肉が弱いと、身体をうまく扱うことができません。
ただ単に筋力を増やすだけで、パフォーマンス力が向上するわけではありません。ある筋力が増強すれば、拮抗筋や補助筋に働く筋肉とのバランスやタイミング、それに伴う技術も変えなければなりません。筋肉を鍛えたあとには、それらとの関係を再構築することが必要になるのです。
(「スポーツ傷害とリハビリテーション」)
コメントをお書きください