●腹圧を上げるトレーニング法
腰の筋力強化といっても、腰自体の筋肉を鍛えるというより、腰を含めて腹部までの体幹周囲を鍛えることが大切です。また、単に筋肉を鍛えるだけではなく、腹圧を上げるということが大切です。
腹圧とは、体幹周囲の腹~腰の部分にかかる圧力です。その位置を解剖的に説明すると、腹横筋、横隔膜、多裂筋、骨盤底筋に囲まれた部分になります。この部位は、コア(狭義の意味)とも言われ、体全体を考えるとき、大変に重要なポイントとなります。腹圧は気功、座禅、武術、呼吸法などさまざまなところで「丹田を意識する」ということでも強調されています。スポーツでは、「腰を使え」などとよく言われますが、「丹田を意識して腹圧を上げて体を中心から使うこと」、とも言い換えられます。
腹圧と腰痛の間には密接な関係があります。この部分の圧が低いと、腰椎を十分固定することができず、その周りの筋肉、靭帯に余分な負荷をかけてしまうからです。腹圧がしっかり入った状態では、腹部の体液を介してしっかり腰椎を支えることができ、腹、腰が安定し、大きな力を発揮することができます。
腹圧を上げるのに重要な筋肉が、上に挙げた横隔膜、骨盤底筋、多裂筋、腹横筋の筋肉群です。これらの筋肉は、体が効率的に動く機能を保つために非常に重要です。横隔膜は、複式呼吸を行うときに特に意識する腹部上面を覆う大きな筋肉です。腹式呼吸は横隔膜呼吸とも呼ばれますが、正確にはコアを形成する4つの筋肉をすべて使います。腹式呼吸は気持ちを落ち着け、自律神経を調整するときに使われます。骨盤底筋の機能低下などは、産後の女性の尿漏れなどの原因のひとつとされています。気功などで、肛門を持ち上げるイメージを用いることがありますが、これは骨盤底筋を鍛えるために行うものです。意識しにくいので、意識しやすい腹横筋をトレーニングし、腹圧を高めることで、同時に多裂筋を収縮するという方法が指示されることが多いです。
(「クリニカルストレッチ」)
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