●食物の栄養素を育てる土壌が枯れてしまった
土壌の栄養分ははなはだしく枯渇しています。その原因としていろいろなことが挙げられますが、おもな原因は、現代の農業を支配している大規模共同農場という手法です。
何千年もの間、農夫たちは、土地を長年にわたって使い続けるためには、土壌の”循環”が必須であることを知っていました。しかし現代の農業は利益や効率が優先され、ほとんどの共同農場で、本来なされるべき土壌のメンテナンスが行われていません。
そこではせいぜい三つの要素(窒素、リン酸、カリウム)と、わずかなカルシウムが土壌に加えられているだけです。それによってカロリーと水と繊維質に富む植物は育ちますが、そこには私たちに必要な栄養素がまったく欠けています。
この状態はわずか60年ほどの間に起こっていることですが、年々悪化しています。「新鮮な農作物を食べましょう」という声がよく聞かれますが、だまされてはいけません。土壌に必要な栄養素がなければ、あなたが食べる植物がいくら新鮮でも、そこには必要な栄養素は含まれていないのです!
不幸なことに多くの農作物が、私たちに必要な栄養素が欠落した土壌で育っています。
どうしてそういうことが起きるのか、あなたは疑問に思うかもしれません。
植物を育てるためだけなら、必要となるのはNPK(窒素、リン酸、カリウム)ですが、私たちの健康のためにはもっと他の多くの栄養素が必要です。多くの土壌は微量ミネラルがないか、あったとしても不足しています。そして近い将来、この状況が改善される希望はほとんどありません。
これら微量ミネラルはミリグラムというよりはマイクログラム単位で必要とされます。つまり必要なのはほんの微量です。しかしここでカギとなるのは、これが”必須”だということです。
現在、多くの近代国家で死因の1位ないし2位が心臓病ですが、微量(ミクロ)ミネラルは心臓の健康にきわめて重要です。セレンは健全な心臓機能のカギを握るものですが、ほとんどの人は(そしてほとんどの医者も)心臓の健康に対するビタミンEと電解質ミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウムそしてナトリウム)の重要性しか認識していません。しかしいかなるビタミンEも、パートナーあるいは共同因子としてのセレンがなければ役に立たないのです。とくに栄養補助が不可欠ですが、近年、同じことがイギリスやヨーロッパの至るところで報告されています。オーストラリアとニュージーランドだけは依然として農場の土壌に十分なセレンがあるとされていますが、これも一部の地域に限られ、いまやこれらの国でさえセレンが不足している地域があるといわれます。
適切なローテーションを無視した農作が行われると、土壌はどんどん荒れてしまいます。欧米の土壌の質がオーストラリアやニュージーランドと比べてきわめて悪い第一の理由がそれですが、河川の氾濫原あるいは火山の裾野にある農場を除いては、いずれどの国でも、食物を育てるために必要な成分が土壌から消えてしまうでしょう。
(いのちの鎖)
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