鼠径部痛(そけいぶつう)症候群では慢性的な鼠径部痛に悩まされます。治療のカギは全身の協調性にあります。
●サッカー選手に多い鼠径部痛症候群
鼠径部痛症候群という名前を聞いたことがありますか。ほとんどの方は聞いたことがないと思います。鼠径部痛症候群は別名グロインペイン症候群といい、以前は「スポーツヘルニア」と呼ばれていたこともありました。鼠径部痛症候群では、鼠径部を中心に股関節内転筋の近位部、下腹部など股関節に近い部分に痛みが生じます。また股関節に可動域制限や筋力低下も起こるため、股関節疾患として扱われてしまうことがあり注意が必要です。
鼠径部痛症候群はサッカー選手によく起こり、キック動作で腹部に力を入れた際に痛みが生じます。日本代表クラスのサッカー選手も慢性的な鼠径部痛に悩み、引退に至ったケースも少なくありません。鼠径部痛症候群では、体幹から下肢の可動性や安定性、協調性が何らかの原因で失われ、股関節や骨盤周囲が機能しなくなり鼠径部周辺にさまざまな痛みを引き起こします。
鼠径部痛症候群の治療は、外科的な手術が行われることもありますが、ほとんどの場合保存的に行われます。まずマッサージやストレッチで腰背部の筋肉、股関節の内転筋、ハムストリングの柔軟性を高めていきます。その後、股関節の外転勤や伸展筋、腹筋の筋力強化に努めます。ここで大切なのは、一つの筋肉を鍛えることに終始するのではなく、上半身と下半身の協調性を高め、バランスよく全身を使えるようにしていきます。サッカー選手の場合、股関節だけでボールを蹴るのではなく、全身を使ってボールを蹴るような動作を獲得しましょう。
(「よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ」)
コメントをお書きください