●関節疾患と慢性病(五十肩)
いわゆる肩関節周囲炎とよばれる肩の病気は、50歳代に多いことから五十肩と呼ばれます。また、腱板(けんばん)断裂も50歳を超えると罹患する方が増えるとされ、膝の痛みでよくテレビや雑誌にも取り上げられる変形性膝関節症も好発年齢が50歳とされています。どうやら、関節に起こる疾患は50歳という年齢が一つの分岐点となっているようです。
では、なぜ、30歳でもなく、40歳でもなく、50歳なのでしょう?関節疾患が50歳代に多い理由は現在の医学でもよくわかっていませんが、慢性障害と同様の機序として考えると次の可能性が考えられます。
慢性障害とは、繰り返し体に微力な外力が一か所に加わり続けた結果生じる障害です。ここで思い返していただきたいのは、左右の機能分化の話しです。私たちは右手足と左手足を無意識に使い分けています。特に足に関しては、からだを支える側としての足(=多くが左足)、ボールをける側の足(=利き足であり、多くが右)であり、利き足である右側の骨盤は左側と比べ前方に傾斜し、骨盤が水平ではなく歪むことが報告されています。
骨盤が水平でなくなった結果、骨盤より上位の背骨や頭、肩甲骨の位置が乱れ、からだ全体がゆがんだ姿勢になります。このような姿勢の変化は、私たちの大部分が、右手足が利き手利き足であることを考えると、およそ似るものと考えられます。
このようなゆがんだ状態でからだを動かすと、いつも微力なストレスを感じる部分、いつもあまり筋力を使わなくなる部分、いつも関節の動きが少なくなる部分といった具合に、からだの動きに一定のパターンが生まれます。この状態が10年、20年、30年と続くにつれ、からだに微力なストレスが蓄積していくとともに、年齢を重ねる中で組織の強度が低下していくと、ある年齢を境に慢性障害として、顕在化されることになります。そのある年齢というのが、関節疾患を訴える方が極端に増加するおよそ50歳代前後と考えています。そのため、関節疾患の予防は50歳前から行うのではなく、機能分化が始まる幼児期以降から行う考え方も決して極端ではないと考えます。
(「よくわかる首・肩関節の動きとしくみ」)
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