自己免疫疾患について。
●死者を増やしたのはウイルスか、アスピリンか
自己免疫疾患を説明するときに、自己細胞を攻撃するというのがその定義の根幹だが、ではなぜ自己の細胞を攻撃するのか、人々は考えたことがあるだろうか。さらにいえば、なぜその部分だけの細胞が攻撃されるのか、もっといえば、全身性に自己免疫疾患が広がる場合と、局所にとどまることの差は何なのか。
一つは、サイトカインストーム(サイトカインの過剰産生)と呼ばれる状況により説明できる。サイトカインとは免疫を担当する細胞が分裂し、他の細胞に影響を与える物質の総称だが、これだけでも多くの種類があるとされる。狭義では生体内のIL-6濃度が異常増加することによる免疫異常状態だが、免疫には他にも好中球・リンパ球・マクロファージなどが相互に絡み合っていると考えるべきだろう。このようなサイトカインストームの状態は、必ずしも感染症だけに起こるとは限らない。人体にとって異物とはウイルスや菌だけとは限らないからである。
サイトカインストームをとらえるときに、新しいものだとSARS、古いものだとスペイン風邪などが例としてあげられる。スペイン風邪が流行した1918年ごろは、アメリカはホメオパシーが盛んで、一時は、22のホメオパシー医学大学、100以上のホメオパシー病院、1000を越すホメオパシー薬局が存在していた。テレビドラマ「大草原の小さな家」にもホメオパシーが登場する。その後、アメリカ医師会による反ホメオパシーキャンペーンによって、ホメオパシーは叩き潰されて、すべてのホメオパシー医科大学は廃校になったり、アロパシー医科大学にとってかわられた。
スペイン風邪のアメリカでの死亡率は以下のとおりだ。
26000人がホメオパシー療法を受けており、そのうち死亡したのは273人であった(死亡率1.1%)。これに対し、現代医学の治療を受けた人が24000人で、うち死んだ人が6768人(28.2%)(Dewey,W.A.,Journal of American Institute of Homeopathy,May 1921.p.1038-1043)。
ケタが違うといってよい。もちろんこの数字はホメオパシー側が算出した数字であり、ホメオパシーびいきの数字である可能性もある。しかしそれを差し引いても、この数字は称賛に値する。
西洋医学系の病院ではアスピリンをとって熱を下げようとした人の多くが死んでいる。これは当然のことである。発熱するというのは防御機能でありウイルスを殺すための作業だ。これを邪魔するのだから死亡者が増えても何の不思議はない。これが狂いだすとサイトカインストームを導くことになりかねないわけだ。
浜六郎氏は多くの著書でアスピリンの危険性を指摘しているが、このスペイン風邪についても言及している。彼は「死亡の85~97%がアスピリンのせいであったと推計できる」と結論しているが、この数字の正確さはさておき総論として間違っているとは思わない。
完全に同意しないのは、このスペイン風邪と呼ばれる感染症は、比較的毒性の強い感染症であったこと自体は間違いないかもしれないからだ。
(「医学不要論」)
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