腸内細菌が私たちの免疫力を高める。
「脳はバカ、腸はかしこい」から引用。
●人間の腸の中で繰り広げられる生物史
私たち人間は突然地球上に出現した生物ではありません。約36億年前、地表に「いのち」が誕生して以来、今日まで長い期間をかけて進化してきた生物なのです。免疫の場としての腸には、驚くほどたくさんの細菌が存在しています。人間の腸には500種以上、その数100兆個以上の細菌が生息し、その重さは大腸内に生息する細菌だけでも2kg近くになるといわれています。これらの細菌はいわば私たち生物がかつて住んだことのある「原始社会」に生きています。
約36億年前「いのち」が誕生し、やがて酸素がないところで細菌類のみが生きた原始地球と同じ環境が、現在の「人間の腸の中」で再現されているのです。
腸は単なるチューブなのではなく、複雑な生体機能をつかさどる重要な器官であることがわかってきました。脳がなく腸だけで生きているヒドラのような生物を観察していると、腸が脳の原型であることがよくわかります。神経細胞がびっしり並んでいる臓器は腸以外にはないのです。腸は脳とおなじように「考える臓器」であります。
この腸内細菌が私たちの免疫力を高め、生きる力を生んだのです。そればかりではありません。この腸内細菌は子どもの脳の正常な発達をも促すのです。さらに豊かな感性や情緒の形成を導いているのです。
私は生まれてからすぐの、アトピー性皮膚炎に悩んでいる赤ちゃんの腸内細菌を調べたことがあります。驚いたことに、それらの赤ちゃんの40%が便から大腸菌がまったく見つからなかったのです。生まれた直後の赤ちゃんの腸内細菌が一度大腸菌だらけにならないと、赤ちゃんの腸はその後の正常な発育が望めないのです。一度腸内細菌が大腸菌に占拠されないと、免疫力をつけることができずアトピー性皮膚炎を発症し、それが一生治らなくなるのです。
(中略)
腸管の運動は自律神経のバランスによりコントロールされています。自律神経のうち交感神経がアクセルとなって下痢を起こすシグナルを出します。一方、副交感神経はブレーキの役割があり、便秘を起こすシグナルを出します。これに心的ストレスが加わるとこのブレーキとアクセルのバランスが崩れ、便通異常を起こすことになるのです。
社会が複雑化しストレス社会になった今、脳・腸相関を免疫学を通して解明することが必要とされる時期になってきたのです。
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