●インフルエンザ予防接種不要論の背景
毎年、その規模は違っても、必ずといっていいほど流行するインフルエンザへの対策として、誰もが考えるのが予防接種だ。インフルエンザに予防接種は、本当のところ、有効なのだろうか。その時期が近づくと欠かさず予防接種を受けているという人には申し訳ないが、答えは「NO」だ。
もちろんまったく役に立たないわけではない。インフルエンザにかかった場合、予防接種をしておいたほうが、重症化を防ぐ効果はあるかもしれない、という程度のことはいえるだろう。
インフルエンザの予防接種が有効かどうかを判断するために、これまでの歴史的背景を見てみよう。以前、予防接種は誰もが強制的に受けるものだった。小学校、中学校では生徒全員に対して集団接種がおこなわれていたのだ。
そんななかで接種の中止に踏み切ったのが群馬県前橋市の医師会。理由は、接種を受けた子どもにけいれんの副作用が起きたからだ。1979年のことである。医師会は中止を決めただけではなかった。
予防接種に、事実、効果があるものなのか、それともないのかを確認するための調査に取り組んだのである。つまり、接種を受けた子どもと、受けなかった子どもとで、インフルエンザにかかる確率に変化があるかどうか、ということを5年間にわたって詳細に検証したのである。
結果は中止を決めた医師会の判断が正しかったことを証明するものだった。予防接種を受けても、受けなくても、インフルエンザにかかる確率は変わらない。検証でそのことが明らかになったのだ。
これを受けて全国に集団接種をやめる動きが広まった。そして、1994年、集団接種は廃止され、インフルエンザの予防接種は任意になる。その後数年間、予防接種を受ける人は激減した。もちろん、それで日本列島にインフルエンザが大流行するなんてことはなかった。
ところが、近年はまた予防接種を受ける人が急激に増えている。そのことと、流行時期を前にして、毎年決まったように「今年は○型インフルエンザが大流行しそうだ」といったニュースがマスコミで流されている、ということとは無縁ではないのだろう。
もちろん、予防接種不要論に絶対的な正当性があるとまではいえない。しかし、前橋医師会が長期にわたり、丹念に取り組んだ検証結果は、ひとつの明確なエビデンスとして、頭の片隅に置いておくべきだと思う。そのうえで、受ける、受けないは、みなさんそれぞれの判断ということになる。
(「薬のいらない体になる食べ方」)
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