●ランニング障害は二つに分類できる
足、腰の痛みを中心とした整形外科的ランニング障害は、大部分が走り過ぎによって起こるものです。ひとたび故障すると、なかなか治らなくて、多くのランナーを悩ませることになります。
これらの障害にはいろいろなものがありますが、原因となる力の加わり方によって大きく二つに分類することができます。
一つは、いわゆるスジである腱や靭帯が引っ張られることで起こる障害ーー引っ張り力による障害で、もう一つは、それらが体内で動くために、周囲との摩擦による障害ーー擦れることによる障害です。
●引っ張り力による障害
ランニング障害で目立って多いのが、腱鞘や靭帯付着部炎です。
腱や靭帯は、関節を構成している線維性の組織で、常に引っ張りの力を受けている部分です。これらの組織では構造的に弱い部分があると、力の分散が不均等になります。その結果、弱い部分に力が集中することになり、障害へとつながっていきます。実は、骨に腱や靭帯が着いている箇所は、比較的弱い部分になるため、障害が発生しやすいのです。初めはごく小さな亀裂として発生しますが、ひとたび亀裂ができるとその部分にさらに力が集中してしまい、亀裂は徐々に進行していき、ある程度の大きさに達すると痛みを感じるようになります。かかとの痛みや、膝周囲の靭帯性の痛みは大部分がこの種の障害です。
●擦れることによる障害
腱は、身体の中で動くことによって手足に力を伝えています。動くたびに周囲と摩擦することになり、回数が多いとトラブルが発生します。
腱の通り道には腱鞘というトンネルがあり、その内側にはつるつるした粘液があって、頻回の摩擦に耐えられるようになっています。ところが耐えられるといっても限度があります。長時間の酷使や曲がったり、出っ張ったりしている部分では異常負荷などが原因で、粘膜細胞の表面に小さなキズができることがあります。この小さなキズが発端となって、障害は徐々に進行してゆき、そのうちに腱鞘全体に炎症反応を引き起こします。これが摩擦による障害としての腱鞘炎や長脛靭帯炎、関節炎などです。
(「ランニング障害解決事典」)
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