●遺伝子組み換え産業の傘下に入る世界の種苗メーカー
企業が乗っ取られなくても、日本の種苗会社はちゃんと遺伝子組み換え技術を研究している。消費者の遺伝子組み換えに対するアレルギーが収まるのをただじっと待っている。すでにタネは買う時代である。大手種苗会社のタネが一番いい。タキイがいい、いやサカタのほうがいいと、一見ケンカしていても、大元ではみんなつながっている。タネというのは消費者も販売者も知らない間にどんどん変化しているのである。
近頃、あるお客さんが「野口さんは遺伝子組み換えでないタネを売っていると聞いてやって来ました」と訪ねてきた。「えっ、遺伝子組み換えのタネなど、日本中どこにも売ってないはずですよ。研究している会社はありますが」。僕はそう説明してお帰り願ったが、果たして、これが現状を正確にお伝えしたのか、自分でも自信がなくなっている。
現在、牧草のタネ用として、アメリカから遺伝子組み換えのアルファルファを輸入、栽培しても構わないことになっている。ニュージーランドでは、アルファルファは飼料用の牧草としてより、スプラウト(サラダ用のもやし、カイワレのような発芽野菜)として人間が食べることが多いため、危険だと判断され、一切輸入をしていない。ところが、日本ではこのアルファルファの輸入・栽培が許可されている。考えてみれば、いつうちで売っているアルファルファのタネ(スプラウト用)が遺伝子組み換えになっていてもおかしくない時代だ。輸入元には表示義務がないから、いつの間にか遺伝子組み換えされたアルファルファ(スプラウト用)を売ることになるかもしれない。ぼくも輸入元に「品種名を教えてください」と電話で聞いたりしているが、「わかりません」と言われたらそれまでだ。
(中略)
いつの間にか状況がどんどん変わってきて、僕もきっぱりと「日本で遺伝子組み換えのタネは売っていません」と言えなくなってしまった。「売っていないはずです」と答えるしかないところまで来ている。
(「タネが危ない」)
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