●放射線を照射して品種改良(ゴボウ・納豆)
マメ科のインゲンで黒種衣笠(くろだねきぬがさ)という品種から、雄性不稔が一株見つかった。今インゲンから始まって、大豆や他のマメ類にその遺伝子を取り込もうと、研究が始まっている。もうすぐマメ科でも雄性不稔のF1が販売されるようになるだろう。やがて、インゲンから採った遺伝子を大豆に取り入れたF1枝豆が生まれるだろう。各社の競争は続いている。
そのほかのキク科、マメ科作物はおおむね固定種である。もっとも、F1でなくても放射線を照射した品種改良などが行われている。キク科作物では、ある会社が長いゴボウに放射線を当てたところ、丈が縮まり、早く生育するようになったので、「コバルト極早生」という名前をつけ「家庭菜園に最適です」と売り出した。
だが、コバルトという名前がよくなかったのか、あまり売れなかった。15年経って品種登録が切れる前にもう一度、放射線を当ててみた。すると、さらに丈が短くなったうえに、ゴボウ特有のあくがなくなった。あくは遺伝子が傷ついてなくなったようだ。「これはサラダで食べられる」と、この会社は「てがるゴボウ」と名づけた。
その後、タキイがそれを買って、「サラダむすめ」という名前で売り出した。これが今評判になり、サラダゴボウとして売られている。自家採種可能だが、それをすると品種登録法違反で訴えられる。遺伝子には修復しようとする機能があるから、タネを播くと長くなったり、アクが出たりするようになるかもしれない。
マメ科では茨城産の在来種である「納豆小粒」という品種に放射線をかけてより小さくした「コスズ」とか、「スズヒメ」といった品種が作られている。小粒納豆として広く栽培されているから、食べている人も多いだろう。
(「タネが危ない」)
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