私たちは雄性不稔のF1の野菜を食べています。
雄性不稔とは:植物の葯(やく)や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になることをいう。
●雄性不稔はミトコンドリア遺伝子の異常(「タネが危ない」より抜粋)
雄性不稔がなぜ生まれるのか、なぜ母親株から子供に引き継がれるか考えてみたい。雄性不稔が発見された当時、何が原因なのかよくわからないまま、母系遺伝する「非メンデル遺伝」などと言われていたが、今では原因がわかるようになった。要するに雄性不稔はミトコンドリア遺伝子の異常であった。
ミトコンドリア遺伝子の異常は、母親から子供に伝わっていく。代々の子供はみんな子孫を作れない無精子症になる。母親の個体異常が子供へどんどん広がっていく。今売られている玉ネギはほとんどF1である。この玉ネギを買って、畑に植えてみればよくわかる。咲いた花は全部いじけた花粉の出ない花になる。
近年、人間の男性不妊症や動物の不妊も、ミトコンドリア異常が原因だと言われている。2006(平成18)年10月3日付け読売新聞は、「動物の男性不妊症、無精子症はミトコンドリアの変異が一因」と伝えている。見出しは「一因」とあるが、記事はほとんど「主因」と読める。
ミトコンドリアの遺伝子が傷ついたことによって、精子の数や運動量が減り、不妊症状、無精子症になることがマウスを使った実験でわかったという記事である。
ミトコンドリアは本来、生命体にとってなくてはならないエネルギーのもとである。ミトコンドリアは呼吸によって酸素エネルギーを細胞に供給するとともに、傷ついたり老化したりすると、活性酸素(フリーラジカル)を出して細胞や遺伝子を傷つける。
ミトコンドリアが傷つくことによって、動物も植物も子孫を作る能力がなくなってしまう。ミトコンドリア遺伝子の異常を起こした植物が雄性不稔のF1になった。我々はそのF1野菜を食べている。我々は日常的に、生殖能力を失った、ミトコンドリア異常の野菜を食べている。玉ネギのミトコンドリアは玉ネギ全体の重さの一割を占める。玉ネギの異常遺伝子は脈々と受け継がれていくのである。
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