●植物にも動物にもミトコンドリアがいる
動物細胞と植物細胞のどちらにも、ミトコンドリアがいることによって生命体として成り立っている。
動物も植物もほとんど同じ仕組みだというのはこのことだ。46億年前に地球が生まれ、35億~38億年前に最初の生命が誕生した。この最初に生まれた生命はみな単細胞のバクテリア、要するに細菌である。この細菌の時代が10数億年続く。
やがて、バクテリアの中からシアノバクテリアという光合成して酸素を出すバクテリアが生まれる。酸素を出すことによって、地球上に酸素がどんどん増えてくる。46億年前、地球の大気にはほとんど酸素がなかったが、シアノバクテリアによって酸素が増えていく。最初に誕生したバクテリアは酸素がないところで生まれているから、「嫌気性」の菌であった。
嫌気性の細菌にとって、酸素は猛毒である。酸素に触れると死んでしまう。そのため、それまでのバクテリアは、海底深くや地中奥深くなど、酸素のない環境で生活するようになる。嫌気性の菌は我々の身体の中にもいる。オナラのもとであるメタン菌は腸の中の酸素がないところで生活し、オナラを作っている。
嫌気性の菌にとって酸素が猛毒である一方で、酸素を必要とし、呼吸してエネルギーに変える「好気性」の菌も生まれてくる。あるとき、好気性の菌と嫌気性の菌が出会う。そして嫌気性の菌が好気性細菌を取り込み、酸素呼吸をする生命に変わっていった。
この好気性細菌がミトコンドリアとなった。生命はミトコンドリアを取り込んだことによって、酸素のある環境でも酸素呼吸をして生きられるようになる。元の単細胞嫌気性細菌の中でミトコンドリアはどんどん増殖し、生命は多細胞に変わっていく。
2008(平成20)年1月、千葉大学大学院園芸学研究学科が発表した「真核細胞誕生の謎を解くパラサイト・シグナルを発見ーミトコンドリアと葉緑体が独自のシグナル分子(MP)で核ゲノムと細胞を支配」というニュースリリースによると、ミトコンドリアと(同時に植物では)葉緑体の遺伝子が増殖を終えないと、細胞の増殖も起こらないことがわかったそうだ。つまり、ミトコンドリアの増殖が単細胞生物から多細胞生物への引き金になったというのだ。これまでミトコンドリアも葉緑体も核の遺伝子によって支配されていると信じられてきたが、もしかしたら逆で、ミトコンドリアこそ、われわれ人類にまで続く進化の支配者であるかもしれないというわけだ。
多細胞になった生命のうち、動くものは動物になり、動かないで数百年の命も持てるようになって増えていったものが植物になる。だから、細菌以外の動物も植物もすべてミトコンドリアによって生かされてきたのだ。ミトコンドリアがいかに重要な役目をしているかがわかるだろう。
(「タネが危ない」)
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