●消えたエコナ
エコナが一般の油に比べて「身体に脂肪がつきにくい」という話は、私達、脂質栄養を専門とする者には考えにくい話でした。これは、ぜひ、自分たちで調べてみよう、と話し合いました。
そうこうする間に、脂質栄養学の専門家が、「ラットではエコナの効果は再現できない」とする論文を発表しました。
そして、臨床的にも二つの大学の研究室が、再現できないというデータを発表しました。そのうちの一つは、明確に否定する要約(結論)ではなかったのですが、データを調べてみると、まったく効果はありませんでした。
このようなことから、エコナで許可されたような効果は無いと結論し、私はそのことを方々で書きました。
当時、エコナに対する風当たりは強く(多分、市場を奪われた油脂業界からでしょうか)、ひきついで「グリシドール脂肪酸エステル」という微量成分がやり玉にあがりました。
一般の食用油よりこの物質のレベルが高かったのです。この物質は分解されてグリシドールになりますが、これに発癌性が疑われているのです。そして、毒性そのものの追求があいまいな段階でエコナは市場から引き揚げられました。
その後、エコナのトクホ(特定保健用食品)の許可は、企業の方から取り下げられました。
私は最初から「エコナについては再審査が必要であり、中立の研究機関で効能効果を証明することが必要である」と主張してきました。「中立の機関」と注文を付けたのは、企業による研究には信頼できないものが多いからです。
かくしてエコナは市場から消えましたが、エコナにトクホ資格を与えた人(国)は、企業が自発的に取り下げた形ですから、責任は逃れました。
一方、この企業は年間200億円という売り上げを何年か続けたわけですから、結果的には丸儲けでしょう。
しかし、高いお金を出してエコナを愛用してきた消費者は、効果がなかったとすると怒りは収まらないでしょう。幸いなことにエコナには強い毒性はなかったようで、ひとまずはだれも責任を取らない形で幕引きになったようです。日本的な幕引きでした。
(「本当は危ない植物油」)
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