●たらふく食べて、おしゃべりして…報酬系は大満足
前述の女医さんはいろいろなダイエット法を試しているのですが、成功したことは一度もありません。医学部に入学できたのですから勉強はできるはずですが、勉強がよくできたとしても脳は信頼できないようです。
先日、「バナナダイエットのような単一食品だけを摂るダイエットは、私が言っていたように嘘だったことがわかったよ」と私は彼女に言ったのですが、バナナダイエットに夢中だった彼女は、「へぇー、そうなんですか」と言ったまま、気にも留めませんでした。反証があっても彼女の脳は受け入れようとしなかったのです。そんな彼女にエールを込めて、以下の句を贈りました。
ダイエット 知識はあれど 常識なし
常識を へぇーと流す ただの無知
ウマイねぇ このひとことが デブのもと
脳の報酬系を満足させるのはこのように「食べること」がまず考えられます。脳は自分の報酬系さえ満足させればよいので、身体の健康を守るという腸のことなどまったく無関心です。
最近、「人は何をしているときが幸福か」というテーマで調査した論文が科学雑誌「サイエンス」に載りました。世界中の統計でランキングが最も高いのは「セックスしているとき」で90点を超えました。第2位が「気持ちよく運動しているとき」で77点、第3位は「おしゃべりしているとき」でした。食べることがランキングに出ていないのは不思議な気がしますが、ストレス解消をキーワードにして日本で統計をとると、上位にはきっと「食べているとき」が入るでしょう。
このように脳は自分の報酬系を満足させるために、極めて原始的な行動を好んで強めます。たらふく食べて、セックスして、野に出て運動して、おしゃべりして……これで脳の報酬系は満足してしまいます。このように脳はうわべだけの満足ばかり求め、意志薄弱でうぬぼれも強いのです。常に真実をねじ曲げ、偏見まみれなのです。
(「脳はバカ、腸はかしこい」)
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