●咬むことの重要性
咬むことによる物理的な刺激は、歯ぐきや歯を支える骨に影響を与えます。足を骨折したときにギプスで固定すると、固定していないほうの足に比べて細くなってしまいます。人間の体というのは使っていないと退化してしまうからです。歯もあまり咬まないで使われないでいると、歯を支える骨の骨密度が低下したり、歯ぐきが薄くなったりします。しっかりと咬むことも歯周病予防にとって重要なのです。矯正治療によって不正咬合を治療することは、決して見た目の問題だけではなく、しっかりと咬めるようにするという咀嚼(そしゃく)機能の改善が重要な目的なのです。
咬むことは食べものの消化・吸収にとっても大切です。食べものはまず口の中で、しっかりと咬むことで細かく砕かれ、磨り潰されます。こうして食物が消化・吸収されやすくなるとともに、唾液がたくさん分泌され、食物と混じり合います。唾液の中には抗菌成分のほかにも、唾液アミラーゼなどの消化酵素やパロチンなどのホルモンも含まれていて、その後の消化・吸収にとって重要な役割を果たします。また、咬むことが脳に伝わると、脳は消化管のスイッチを入れ、胃酸を分泌し、胃を活動状態にします。
歯周病になって、歯を支える骨が破壊されてしまうと、食べものをしっかりと咬むことができなくなってしまいます。食べものをしっかりと咬めないと、唾液も十分に分泌されず、歯周組織に十分な機能的刺激を与えられなくなってしまいます。しかも、その後の消化・吸収がうまく行なえず、栄養素を体に十分取り込めなくなります。これが栄養欠乏を招き、栄養欠乏が原因で歯周組織の健康を維持できなくなって、歯周病が進行する、という悪循環に陥ってしまうのです。
ですから口腔のもっとも基本であり、かつ重要な機能である”咬む”という行為こそが、口腔の健康を維持することに何にも増して重要なのです。
(「歯医者が虫歯を作ってる」)
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