●評価が分かれる長寿遺伝子研究
カロリー制限と長寿遺伝子の関係はどうなのでしょうか?
カロリー制限がいくつかの長寿遺伝子に働きかけ、生殖と体の維持(健康寿命・長寿)を完全に切り替えることが分かっています。その代表的な長寿遺伝子が「SIRT」と「TOR」という遺伝子です。
SIRT1という遺伝子は、哺乳類で「サーチュイン」というタンパク質を作り出し、以下のようなストレス防衛反応を高めることが報告されています。
1、神経細胞の萎縮(細胞死)を防ぐ
2、心臓の細胞(心筋細胞)を活性酸素種(フリーラジカル)から守る
3、細胞の自殺死(アポトーシス)を防ぐ
4、熱ショックタンパク質を誘導して、ストレス応答する
このSIRTIを活性化させる物質として、ファイトケミカルの一種であるポリフェノール、とりわけブドウの皮に含まれる「レスベラトロール」という成分が注目されました。レスベラトロールによってSIRT1を活性化させることで、マウスが高脂肪食による悪影響を免れ、しかも体力が増強されることが実験によって報告されたからです。
ただ、カロリー制限に似た効果を引き起こすためには、レスベラトロールを一日赤ワイン300杯分摂る必要があります。これは現実的ではないでしょう。
また、SIRT1の働きによって細胞のアポトーシス(自殺)を防げることが分かっていますが、これがガンに働くとそのリスクが逆に上昇することが報告されています。
ショッキングな内容ですが、その一方で研究者の中にはSIRT1がガン細胞の増殖を抑制するという発表をしているものもあります。
SIRT1という長寿遺伝子の働きはこのように多様にわたり、まだ十分解明されていないというのが現時点での実情といってよいでしょう。
(「間違いだらけの食事健康法」)
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