●インスリン値が高い人はガンになりやすい
これまで多くの研究で、インスリン抵抗性・高インスリン血症による腫瘍増殖・発ガン促進作用が示されてきました。簡単にいえば、肥満などによってインスリンの効きが悪くなって血液中のインスリン量が多くなると、腫瘍が増殖したりガンになりやすくなったりするということです。
そして近年、さらに有力な研究成果が報告されました。
2005年の米国糖尿病学会でカナダのサマンサ博士らが報告したもので、1万309名の糖尿病患者を対象に、高インスリン血症の発ガン促進作用を検証したものです。2006年2月号の「ディアベテス・ケア」に論文が掲載されました。
それによれば、「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループはガン死亡率が1.9倍高まる、SU剤(インスリン分泌を促進させる薬)を内服しているグループはガン死亡率が1.3倍高まる」とのことです。
サマンサ博士らは、それが体内で分泌されたものであれ、体外から投与されたものであれ、「循環しているインスリンの量が増えると、腫瘍の進展や死亡率が高まる」という考えを示しました。インスリンは人体に欠かせないホルモンではありますが、分泌量や必要量が少なくてすめば、それに越したことはないようです。
(中略)
高インスリン血症がなぜガンを発症させるのかは、インスリンが各組織の成長因子であることが関わるとされています。動物実験では、高インスリン血症がさまざまなガン細胞の形成や増殖に関わっているという報告があります。
日本でも厚生労働省研究班が「インスリン値が高い男性は大腸ガンになりやすい」という研究結果を発表し、ガンの国際専門誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」2007年5月号に論文として掲載されました。
研究班は、全国9地域で40~69歳の男女約4万人を対象に、1990年から2003年まで追跡調査しました。興味深いのは、男性だけが高インスリン血症と大腸ガンのリスクに関連があり、女性ではみられなかったことです。
さらにインスリン値による大腸ガンの発症リスクは、直腸ガンよりも結腸ガンで、よりはっきりと現れました。インスリン値のもっとも高いグループの結腸ガンリスクは、もっとも低いグループの3.5倍にも上ったのです。
この研究で女性に関連がみられなかったのは、日本人女性は欧米人女性に比べて肥満の割合が低く、インスリン値の高い人が少なかったからではないかということです。ともあれ日本人男性の高インスリン血症は明確な大腸ガンリスクであり、注意が必要です。
(「主食をやめると健康になる」)
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