●現代人を象徴する「ヘタレ君」の食生活
数年前になる。雑誌「SPA!」が「ヘタレ男」と題した特集を組んだことがあった。積極的に定職にも就かず、ひきこもりほどではないけれど、ニート生活を送っている。そんな現代男性の生態を探るといった内容の企画である。
わたしのところにも取材依頼があったのだが、連絡してきた編集者は、幾人ものヘタレ君に出会ううちに、ある共通点に気づいたという。
「食生活とやる気のなさ、これはなにか関連があるのに違いない」
そう感じるきっかけになったのが、ヘタレ君たちの部屋のなかに散乱するインスタント食品の山だったという。
カップラーメン、ペットボトル、スナック菓子……。一人暮らしの若い男性が料理をするのは珍しいという前提はあったにしても、あきらかに食生活の中心は、インスタント食品だったのである。
興味深いことは、どのヘタレ君も健康には気を遣っているということだった。ラーメンはカロリーの低い春雨ヌードル、野菜ジュースは一日に一本を必ず飲み、スポーツドリンクを飲んで体力増強につとめるといった具合だ。
実際に、一人のヘタレ君が、編集者にともなわれて当院にやってきた。
彼は両親と同居。2階にある自分の部屋で昼夜逆転した生活を送っていた。階下で母親が閉めるドアの音にも敏感で、バタンという音が聞こえるたび、「うるせえな、くそババア!」とキレていたという。精神科にも通院し、多量の薬も服用していた。
血液検査をしてみると、まさに栄養欠損そのものの結果が出た。インスタント食品中心の食生活では「亜鉛」が欠乏してくる。やる気は失せ、性欲もなくなるというのが特徴だ。音に敏感で、睡眠リズムが乱れ、すぐにキレる。これはビタミンB群が不足しているために起こる症状である。
彼には必要なもの以外、飲んでいる薬のほとんどをやめてもらった。欠乏している栄養素を補うため、サプリメントを飲んでもらい、当然、インスタント食品は封印。食事指導もおこなった。
わたしのもとに朗報が届いたのは、2週間後のことだった。そのヘタレ君が就職活動を始めたというのである。2週間で前向きな意欲が出てきたというのは、素晴らしい変化であった。
(「うつ」は食べ物が原因だった!)
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