●コレステロールは「量」より「酸化」が問題
LDLコレステロールは、ビタミンE、コエンザイムQ10をはじめ、ベータカロチン……などたくさんの脂溶性の栄養の運搬役をつとめている。
そればかりか、性ホルモンだけではなく、各種ステロイドホルモンやビタミンDなどの材料にもなっている。とった油を分解し、吸収するために欠かせないのが胆汁酸だが、これの材料も、また、コレステロールなのだ。
つまり、いたずらにLDLコレステロール値を下げれば、必要な栄養素が体の組織に運ばれる量も減ることになり、栄養やホルモンなど体にとって重要な物質がつくられるのを阻害してしまうのである。
特に薬でコレステロール値を下げることの弊害は見過ごせない。薬はコレステロールの前駆物質の合成をブロックする作用をするのだが、そのことによってコレステロールがつくられなくなるのと同時に、たとえば、先にあげたコエンザイムQ10の合成も妨げてしまう。”悪玉退治”は体にとって極めて大切な働きをする栄養が足りなくなることにもつながっているのである。
さて、LDLコレステロールが悪玉と見なされるようになった理由だが、これははっきりしている。「酸化」である。つまり、酸化したLDLコレステロールの作用が、まさに悪玉のそれなのだ。
だから、重要なのは酸化LDLコレステロールをつくらないこと。必要なコレステロールはちゃんとあって、酸化もさせない。これがもっとも理想的な体内のコレステロールの”有り様”なのだ。
そのためには、ビタミンE、ビタミンCなどすぐれた抗酸化作用を持っている栄養を十分にとることだ。あわせて酸化ストレスを高めるような生活習慣を避けることである。その典型的なものが「喫煙」。
喫煙というと、ニコチンやタールの害を考えがちだが、その以上に問題なのがタバコを吸うことによってつくられる活性酸素が、大きな酸化ストレスをもたらすということだ。もちろん、コレステロールの酸化にも直結する。血管系の重大な病気のリスクファクターとして、喫煙が真っ先にあげられるのはこの強烈な酸化作用によってである。
もうひとつ、コレステロールで注意が必要なのは「糖化」だ。LDLコレステロールは、正式には低比重リポタンパクといって、コレステロールを含んでいるたんぱく質なのだ。たんぱく質は糖があるとそれとくっついて糖化する。そうして糖化したコレステロールは、酸化したコレステロールと同じくらい悪さをする。
たとえば、免疫系のマクロファージ(大食細胞)に食べられた糖化コレステロールが、血管について動脈硬化の原因になったりするのである。その意味で、ご飯やパン、砂糖などの糖質を控える「糖質制限」による血糖値のコントロールが非常に大事になる。
「酸化」と「糖化」。コレステロールを悪玉化するこの2大要因を、食事の工夫によって、あるいは生活習慣の改善によって、阻止しなければならない。
(「薬がいらない体になる食べ方」)
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