●メタボ基準値にコレステロールが入っていない理由
糖尿病、高血圧などの生活習慣病の医療費が、国民医療費の30%を占めることになり、2008年には厚生労働省が中心となり、特定健診・特定保健指導の制度がはじまった。この制度のもとになったメタボリックシンドロームは、内科系の学会が中心となって2005年に診断基準が示された。
・ウエストサイズ(周囲径)……男性85cm以上/女性90cm以上
・トリグリセリド(中性脂肪)値……150mg/dl以上
・HDLコレステロール値……40mg/dl未満
(トリグリセリド、HDLコレステロールのいずれかか、または両方)
・最高血圧……130mmHg以上
・最低血圧……85mmHg以上
(最高血圧、最低血圧のいずれかか、または両方)
・空腹時血糖値……110mg/dl以上
この項目のうち、ウエストサイズが基準値以上で、他の項目に2つ以上該当していれば、メタボリックシンドロームの診断がくだる。
一見してわかるように、この診断基準には「コレステロールが高い/低い」という項目が含まれていない。HDLコレステロールの数値はあるが、これはいわゆる善玉コレステロールの数値が”低い”ことが問題だとしているのであって、コレステロールの数値が高いことは、メタボリックシンドロームの診断では問題にならないことを、明確に示しているわけだ。
これまでさんざん悪者扱いされてきた、LDL(悪玉)コレステロールの数値は、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高いとされるメタボリックシンドロームとは”無関係”と断定されたのである。その意味で、この診断基準は高く評価できる。
LDLコレステロールは、基本的に悪玉ではない。機会あるごとに私は主張し続けてきた。はからずも、この診断基準がそれを裏付けてくれたわけだが、LDLコレステロールは悪玉どころか、体にとって必要不可欠、なくてはならないものなのだ。
たとえば、性ホルモンの材料になっているのはLDLコレステロール。男性ではテストステロン、女性はエストロゲンがその性ホルモンだが、どちらもLDLコレステロールがないとつくられない。
加齢とともに性ホルモンは減少する。女性は閉経後にそれが顕著になるが、それにともなって更年期症状と呼ばれる、心身の問題があらわれてくる。女性ばかりではない。男性も性ホルモンが減ることで、心にも体にも影響があらわれることがわかっている。
この性ホルモンの減少に対抗するには、その材料であるコレステロールがつねに潤沢に体にあることが必要。悪玉と信じ込んで、せっせと減らす努力をするのは、心身の老化を早めているに等しいのである。
また、細胞膜を構成しているのもLDLコレステロールだし、体の末梢組織に運ぶ役割を担っているのもLDLコレステロール。アンチエイジングの決め手ともされるコエンザイムQ10も、LDLコレステロールに含まれて運ばれるのである。
(「薬がいらない体になる食べ方」)
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