●やせている人でも”隠れメタボ”の可能性が
内臓脂肪は血液取り込まれ、体の末梢のさまざまな組織に運ばれて、そこでエネルギー源として消費される。血液中を運ばれるためには、たんぱく質と結びついたリポタンパクの形になる必要がある。ここでもたんぱく質は重要。たんぱく質が不足していれば、内臓脂肪は血液に取り込まれないで、内臓にたまったままになるからだ。
その典型が食事でたんぱく質を制限している人、肉を食べずにパンとサラダとか、そうめんやパスタなどの軽い麺類ですませているような人だ。そういう食事をしている人は、たんぱく質が十分にないから、肝臓でつくられる糖質由来(内因性)の内臓脂肪がリポタンパクとして血液で運ばれないまま、内臓にとどまってしまう。食事そのものは粗食で体型はやせていても、内臓には脂肪がびっしり張りついているのがこのタイプ。いわゆる”隠れメタボ”である。
だから、「このスリムな体型だから大丈夫」という思い込みは疑ってかかる必要がある。血液検査は、中性脂肪の数値をもとに、内臓脂肪を予測しているに過ぎない。中性脂肪が高くなくても、エコーで見ると明らかに内臓脂肪がたまっているといこともあるのだ。
脂肪を取り込んで血液中を流れているリポタンパク(中性脂肪の数値はこれを測ったもの)のうち、肝臓でつくられる糖質由来の中性脂肪と結びついているのはVLDL、食事に含まれる脂肪分に由来している中性脂肪と結びついているものはカイロミクロンと呼ばれる。
それらに含まれているたんぱく質は2~7%で、主成分はトリグリセリド(中性脂肪)である。つまり、VLDLやカイロミクロンの多い人は、それだけ血液が油っぽいわけだ。実際、数値の高い人の血液を試験管に入れておくと、上に油の膜が張ってくる。通常の血液は、同様にすると、上には薄黄色の透明な血清ができるのだが、脂質異常症の人は、油で白く濁るのだ。
一般には見ることはできないが、もし自分の目で確かめたら、
「体の中にこんな血が流れているんだ。これは絶対に食事を改善しなきゃ!」
と思わない人はいないはずだ。
血液検査の際、当日の朝食を抜くのは、食事でとった油の影響が出ない状態で数値を測るためだ。ところが、前日の食事の影響が残ってしまう人がいる。これは一歩進んだ脂質異常症といえる。
そのようなカイロミクロンが高い人の血管は、特に大きなダメージを受けていると考えられる。つまり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが非常に高いのである。一般的な中性脂肪の測定だけでなく、医師に依頼して、VLDL(内因性)とカイロミクロン(外因性)の数値を測ってもらうといいかもしれない。
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