●胃が痛いときに「痛み止め」を飲んでいないか
ストレス社会に生きているのが現代人。シクシクだったり、キリキリだったり、感覚はさまざまだが、胃が痛くなることがあるだろう。通常は胃の痛みには「胃薬」を飲むものだが、なかには”痛み”をとるためだからと、痛み止め、鎮痛剤を飲む人がいる。これは絶対に避けるべきだ。
「痛み止めを飲めば胃の痛みもなくなるのでは?」
確かに、そう。胃の痛みも炎症から起きているわけだから、炎症を抑える痛み止めで痛み自体はとれる。しかし、痛み止めは胃に対してもっと重大な弊害をもたらすのだ。
非ステロイド系の痛み止め、抗炎症薬は全般的にNSAIDと呼ばれるが、これは、痛みのもとになるプロスタグランジンがつくられるのをブロックすることで、痛みをとるというメカニズムで働いている。
問題はこのプロスタグランジンの抑制。プロスタグランジンには胃の粘膜を保護する作用があるのだ。つまり、NSAIDを使えば、痛みはとれるのだが、同時に胃を保護する役目を果たしているプロスタグランジンを抑制し、胃粘膜を無防備の状態にしてしまうことにもなるのである。
頭痛薬などの鎮痛剤を飲むと胃が荒れる、とよくいわれるが、薬自体が胃を荒らすという直接的な作用ばかりでなく、プロスタグランジンの抑制によって胃粘膜はより大きなダメージを受ける。座薬を長年使っていて胃が荒れるということもあるし、NSAIDの入った湿布薬を常用しても胃が荒れることがあるのは、このためである。
胃をそんな状態にさらしていると、胃粘膜障害(胃炎や胃潰瘍)を起こすことになり、しかも重症化しやすい。私が研修医時代にもこんなことがあった。
ある患者さんの胃の壁がボロボロになり、全周囲性のスキルスガンが疑われたため、手術をすることになった。ところが、入院してもらいそれまで飲んでいた薬を確認したら、痛み止めを長期間にわたって飲んでいることがわかったのだ。
即刻、服用を止めてもらったところ、ガンかと思われた胃の状態が回復、手術不要で治ってしまったのである。
NSAIDは痛みがなくなるから、気づかないうちにそこまで胃にダメージを与えてしまう可能性がある。これは、ぜひ、知っておいていただきたい。胃痛には胃薬を飲む、痛み止めは厳禁だと肝に銘じておこう。
(「薬がいらない体になる食べ方」)
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