●炎症には「脂肪」がかかわっている
炎症と深くかかわっている栄養が「脂肪酸」だ。「脂肪」と聞くと、とかく悪者と思われがちだが、体にとって不可欠なものなのだ。問題は「どの脂肪酸をとるか」ということにある。
人の体には摂取しないと生命が維持できない脂肪酸がある。そのためその脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼び、オメガ3系とオメガ6系の2種類がある。オメガ3系の脂肪酸は、魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)が代表であり、その他としては、亜麻仁油(あまにゆ)やシソ油などに含まれているアルファーリノレン酸がある。一方、オメガ6系の脂肪酸は、大豆、コーン、紅花などの植物性の多くの油に多く含まれているリノール酸が代表である。
リノール酸は、コレステロールを下げる作用などが知られており、体によいと思われ、サラダ油、ドレッシング、マーガリンなどの原材料として大量に使用されている。
それぞれの代謝の流れは、リノール酸はガンマーリノレン酸に変換され、さらには2-ホモーガンマーリノレン酸に変わって、プロスタグランジンの1系という生理活性物質をつくる。プロスタグランジン1系には血管を広げ、血小板を凝縮させず、血液をサラサラにする作用がある。これらはいずれも炎症を抑える働きをする。
ところが、この流れは阻害されているのだ。サラダオイルやマーガリンなどの油からとったリノール酸が、ガンマーリノレン酸に変わるためには、その反応を媒介する酵素が必要になる。デルタ6不飽和化酵素というのがそれ。ただし、日本人の場合その酵素の活性が低く、アレルギー体質ではさらに活性が低い。
そのためリノール酸を出発点としてできる、炎症を抑え血液をサラサラにさせる働きを持つプロスタグランジン1系がスムーズにつくられない。有効成分がつくられないだけではなく、リノール酸がアラキドン酸へ変換されてしまい、結果としてアラキドン酸からつくられるプロスタグランジン2系の活性物質がつくられてしまう。つまり、コレステロールを下げ、血液もサラサラにするはずのリノール酸を摂取すると、かえって炎症を促進し血液がかたまりやすくなってしまうのである。
植物からつくられたサラサラのサラダ油が体によい油であり、バターよりもマーガリンのほうがよいと考えられていた「リノール酸神話」は、栄養学の分野では完全に崩れ、マーガリンよりもバターのほうが、サラダ油よりラードのほうが安全であるということが知られるようになった。
栄養の分野では常識と思われてきたことが、実は体にとって害があったりすることがある。これらの情報は、栄養学の専門家には広く知られているが、一般の方へ知られるようになるまでには長い時間がかかってしまう。そして多くの医師も栄養学には興味がなく、間違った栄養の知識をもとに患者さんへの指導が続けられてしまうことが大きな問題なのである。
(「薬がいらない体になる食べ方」)
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