●沖縄が長寿県から脱落した真相
以前の沖縄は、都道府県別平均寿命で男女ともにトップだった過去もあり、長寿の島として世界的に名を馳せていました。ところが、00年に男性が一気に26位まで後退し、「26ショック」などといわれた頃からずっと低迷しています(その前の95年調査では4位)
(中略)
しかし、どうにも納得できないのは、沖縄クライシス(危機)の原因として必ず取り沙汰されるのが、「食の欧米化」と「運動不足」であること。県内の多くの医療機関も、この2点をしきりに啓蒙しています。自治体主導で指導を行っている市町村もあります。
(中略)
アメリカの統治とともに食文化が輸入され、県民がこぞってステーキやハンバーガーを食べるようになった状況など、沖縄には起きていません。というよりむしろ、肉をよく食べていた琉球食文化の伝統が薄れるとともに、穀物や野菜中心の食生活に変わっていきました。これが、戦後の沖縄県民に起きた食生活の変革です。
本土では、3世紀に農耕が確率しました。同時に、仏教の伝来などによって、肉食を”けがれ”とする思想もあり、生き物の殺生や肉食を禁じる法令がたびたび出されます。こうして肉食が忌避され、穀物・野菜中心の食文化が形成されました。
対して沖縄では、琉球王朝時代(1429~1879年)に養豚が盛んになり、山羊も食べられていました。以来、肉食中心の食文化が600年以上も続いたのです。そのことは、沖縄県内にほとんど田んぼがなく、米の自給ができないという事実からもうかがえます。
(中略)
しかし、この独自の素晴らしい食文化も、戦後の急速な近代化の波にのまれていくことになります。フールー(民家の豚小屋)が廃止され、チーイリチー(野菜などを豚の血で炒めたもの)やラードも敬遠されるようになりました。それが戦後の沖縄であり、アメリカは偶然その時代に統治していただけのことです。
(中略)
それなのに、沖縄クライシスの原因を「食の欧米化」と決めつけるのは、明らかな事実誤認といわざるを得ません。沖縄県民に肥満や糖尿病が急速に増え、都道府県別平均寿命の順位を下げた原因が何かといえば、肉食から草食(穀物・菜食)に変わってしまったから。沖縄県民は、「食の本土化」によって健康状態を著しく悪化させたのです。
(「日本人だからこそ「ご飯」を食べるな」)
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