●カロリー理論に科学的根拠はない
カロリー制限食の本質は、「必須栄養素を食べてはいけない」という摩訶不思議な栄養指導でした。そのルールは、たんぱく質と脂質を控えて炭水化物中心の食事にするとともに、総摂取量の規制も加わるというものです。
たいていの場合は、男性が1日1600キロカロリー、女性が1200キロカロリー程度に制限され、その数値は基礎代謝(何もしないでじっとしていても消費するエネルギー量)を根拠にしています。口から入るものをその程度に抑えれば、日常で燃焼する分だけ痩せられるというロジックです。
医療機関で実施されるカロリー制限食では、3大栄養素について次のようなPFCバランスであることが推奨されます(Pはプロティン=たんぱく質、Fはファット=脂質、Cはカーボハイドレート=炭水化物の頭文字)。
●たんぱく質→全体の20%(エネルギー換算。以下同)
●脂質→全体の20%
●炭水化物→全体の60%
これが、「60:20:20バランス」などと呼ばれるもの。一日に1600キロカロリーを摂取するなら、炭水化物が960キロカロリー、たんぱく質と脂質が320キロカロリーずつであるのが望ましいという意味です。
これまで何度も述べてきたように、カロリー制限食には大きなボタンのかけ違えがあるにもかかわらず、栄養指導のスタンダードとされています。そのため、検査で体重や血糖値や血圧などに問題が見つかった方には、必ずこの指導が行われます。そして管理栄養士に、「満腹になるまで食事するのは厳禁。とんカツやステーキは、もってのほかです。今日からすぐ、カロリーを制限する食生活に変えてください」と高らかに宣告されるのです。禁を破ってしまった方には、次回の通院時にきつい叱責が待っています。
(中略)
ところが、それはまったくの見込み違い。実は60:20:20というPFCバランスには科学的な根拠がこれっぽっちもありません。単に、1960~70年代頃の日本人の平均的な食事を調査してみたら、「およそ、その程度だった」ということだけ。そんな曖昧な”分析”が、今も受け継がれてしまっているのです。
健康のためにはどういう栄養バランスで食べるべきかという考察は置き去りにされ、「国民はこれぐらいのバランスで食べているようだから、それを標準にすればいいんじゃないの?」として採用されただけのこと。まったく信じられないことに、科学的・医学的・生理学的・栄養学的な分析は、そっちのけでした。だからこそ、「必須栄養素を抑えて、非必須栄養素をたくさん食べる」という意味不明な逆転も放置されました。
(「日本人だからこそ「ご飯」を食べるな」)
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