タンパク質摂取不足と貧血

先住民食は伝統的な生活を営む先住民族の食生活を参考に、現代社会に生きる我々でも実践できるように考案した食事法です。先住民食は予防歯科のための食事法であり、また予防医学の実践のための食事法です。予防のために作られた食事法ですから、疾患の治療、すなわち代替療法としての食事療法と混同しないようにして下さい。

 

先住民食のコンセプトの一つに、タンパク質、脂質、糖質の摂取割合の目標があります。タンパク質、脂質、糖質はそれぞれカロリーベースで4:4:2になるように摂るべきと指導しています。この摂取比率になるために推奨している動物性食品と植物性食品の摂取割合は、動物7:植物3を推奨しています。

 

これは、狩猟、採集、漁労で生活している先住民族の、典型的な摂取比率から導き出されています。そして、動物性食品の摂取比率が下がるとタンパク質の摂取比率も下がり、タンパク質の摂取比率が下がって炭水化物の摂取比率が上がるにつれ、住民の健康状態が悪くなっていき、むし歯や歯周病の発症率が上がり、平均寿命が低下し、貧血が増えることが分かっています。

 

先住民族のみならず、古代マヤ文明やアナサジ遺跡などの考古学的な調査からも、同様の結果が得られています。すなわち動物性食品の摂取が低下すると、貧血が増加するのです。これは、鉄欠乏によって起こります。

 

鉄というミネラルそのものは、動物性食品にも植物性食品にも含まれています。しかし動物性食品の鉄はヘムというタンパクと結合したヘム鉄という形で存在しているのに対し、植物性食品に含まれる鉄はヘムタンパクと結合していない、非ヘム鉄という形で存在しています。ヘム鉄の吸収率は10~30%なのに対し、非ヘム鉄は2~5%ほどしか吸収できません。このため、動物性食品の摂取比率が低下するほど、貧血になる人が増えるのです。

 

動物性食品の中でも、特に血液や赤身の強い肉にはヘム鉄が多く含まれています。アフリカの先住民族であるマサイ族は、定期的に子牛の血を採り、それを飲んでいます。先住民族の健康的で優れた肉体には、ちゃんと理由があるのです。

 

先住民食が推奨しているヘム鉄の多い食品は、牛肉の赤身、レバーなどの内臓系、クジラの赤身肉、鹿肉などです。特に我が家では、狩猟期間中は鹿肉の割合が大きくなっています。反対に禁猟期間である夏場は、クジラの摂取割合が大きくなります。

 

貧血にヘム鉄のサプリメントというのは、最後の手段です。やはり普段の食生活で栄養欠乏にならないようにすることが、何よりも大切ですね。(さとうながお)

 

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院長:  今  晋

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